2020年、英語の授業が変わると大々的に取り上げられました。あれから4年、現場の英語の授業はどれくらい変化しているのでしょうか。
かつての同僚に話を聞くとさほど変化は感じられないと言います。
2020年は、わたしはまだ公立中学校で英語の授業を行っていました。当時でも相変わらず文法訳読式と言いますか、先生が教科書の本文を黒板に書き、英文解釈するために必要な文法や文構造などを解説している授業をよく見たものです。それはわたしの地域だけで起こっていることではないのかもしれません。
わたしは教壇に立って英語を教え始めてからずっと
「使える英語を身につけてもらいたい」
と思って授業を行ってきました。使える英語を身につける授業ってものすごく難しいんです。生徒にとっても、教師にとっても。だからなかなか変わっていかないのかもしれません。
教壇に立ち始めたばかりの頃は、先輩先生にこんなご指導をいただきました。
「教科書を1時間で1ページ進めていきなさい。」
「しっかりと教科書の本文を理解させなさい。」
「音読をたくさんやらせなさい。」
まぁ、どれも間違いではないですが、当時のわたしにはどうしても納得ができず、聞いたフリをして自由にやっていたものです。1時間で1ページ進めても英語は使えるようにはなりませんから。
ちなみに少し補足をしておくと、教科書っていうのはとても上手に作られているんです。言語材料が散りばめられていて、教科書を使えば必要な語彙や表現を一通り学ぶことができるんです。さらに、1年間で扱うのにちょうどよい量に設定されています。年間で定められた授業数があるので、おおよそ1時間で1ページ進めていくと1年間で終わるくらいの量なのです。だから、経験年数の浅い先生にとってはペース配分の指針になるわけです。
ご指導くださった先生方がどういう意味で言っていたのかはわかりません。みなさんガッツリ黒板に英文を書いて日本語訳をしていましたから、聞く耳をもてなかったわけです。
わたしはわたしなりに学びました。とにかくたくさん使わせようともいました。使っていれば使えるようになるはずだ、と思っていました。なんて浅はかな•••(笑)そんなわけないですね。頭の中にフォルダを作ってあげて自在に引き出せるようになればいいのかも、なんて考えてきっちり理屈で教えたこともあります。いろんなことを考えて実践してみました。
何年かすると、授業中に寝る生徒はいなくなりました。アクティブに教室の中を動き回る生徒が増えました。自分の言葉で海外の人とやりとりをする生徒が増えました。ALT(Assistant Language Teacher)からは、「あなたのクラスの生徒はみんなちゃんと英語で反応が返ってくるね」と言ってもらえるようになりました。本格的に小学校英語が導入されたのおかげもあるかもしれませんが、たくさん考えて実践してきたからだと思っています。
わたしのように、使える英語を身につけさせてあげたいと思っている先生はたくさんいるのに学校の英語の授業はなかなか変わっていきません。わたしは実践を重ねる中でその理由に気づきました。それは、「身近に使える英語を身につける授業を実践している先生が少ないから」です。近くで相談できる先生はとてもわずかでした。だって、みなさん文法訳読式の授業をしている先輩方に「1時間で1ページ進めるんだよ」と教えられるんですから。その先生方から何を学ぶのでしょう。もちろん訳読式の方法じゃないですか?しかも、わざわざ研修に出て行かなければ有益な情報は得られません。だから、相当な決意とエネルギーをもっていないと変化はないわけです。
それでも、生徒のためを考えたら「使える英語を身につけられる授業」は絶対に必要です。もし、そんな授業をしたいと思っているのなら、強い思いをもって行動してください。英語の授業改革のはじめの一歩は、「英語の授業を変えるんだ」という強い気持ちです。