授業づくりの考え方

英語は音から入ろう

音から入ることの効能

英語の授業を行っていると、どうしても文字に頼りたくなっていましますよね。教科書を読ませて内容を読み取らせたり、黒板に書いてあることをメモしたり。まず理解させてそれから発話練習に入っていくことが多いのではないでしょうか。先生にとってはその方が楽なんです。それをちょっと我慢して音声を中心に進めてみましょう。気が長くないといけないですが、英語を英語で理解することができ、自然と英語が口から出てくるようになります。

明示的な理解はあとでいい

主語+動詞+目的語くらいの英文の型は頭に入ってなければいけないですが、中学校1年生程度の英語なら難しいことはあとで良いです。なんなら単語さえ練習する必要もないくらいです。頭を使って英文を解読していくタイプの授業を繰り返すと、生徒の理解は暗号を解読するような感覚になり、単語の意味を日本語で理解し、英文を日本語に直し、日本語で理解できるまで安心感を得られなくなります。それではこれまでの授業となんら変わらず使るようになりません。明示的な理解はあとでいいのです。繰り返し発話しながら英語を体に取り込んでいきましょう。

どうやってやるの?

例えば、中学校1年生の2学期に出てくる人物紹介の単元を見てみましょう。英文は教科書を模して作ってあります。

My brother, Ken, lives in New York City. He studies English there. On weekends, he often goes to Central Park and plays baseball with his friends. He likes eating pizza and hot dogs. He wants to be a baseball player when he grows up. Ken loves watching baseball games on TV. He often goes to Yankee Stadium to watch his favorite team. He also enjoys playing basketball and swimming. He’s very active and always wants to try new sports.

こんな英文が教科書に載っているとします。導入や理解させる方法は様々ですが、こんな方法はどうでしょうという提案です。わたしはよく教科書の挿絵データをプリントアウトして使っていました。付属のCD-ROMにイラストデータが入っていて教科書の挿絵をプリントアウトすることができました。教科書に載っているイラストだけだと枚数が少ないので、データに入っているイラストは枚数が多くて助かっていました。以下に、手順を示します。

① 紹介している”my”にあたる人物のイラストを提示して”Who is this?”と問う
② 私が誰かを紹介していることを伝えて場面をイメージさせる。
③ 兄弟のイラストを提示してリスニングポイントを伝える
What’s his name?/Where does he live?/What does he like?など
④ 紹介している音声を一度に全て流し、リスニングポイントを聞き取らせる
⑤ 生徒に聞き取った内容をシェアさせる
⑥ 答えは確認せずに、もう一度聞く(省略可)
⑦ 聞き終わったら再度聞き取った内容をシェアさせる
⑧ 順に挿絵を出してWhere is this?などと問い、やりとりの中で答えを確認する
⑨ 答えを確認しながらわからない単語や表現を練習していく
⑩ ある程度練習したところで、Who is Ken?と問い、説明を求める
※ ⑦〜⑩を繰り返す、次の時間も⑦〜⑩を復習として繰り返す。

そのうち口から出てくるようになる

多少時間がかかる生徒もいますが、ほぼ全ての生徒が片言でも英語で表現できるようになります。Q&Aには主語と動詞をつけて答えるようにトレーニングしていきます。もし、単語だけで答えるなら、Who does?などと突っ込んで問いかけて主語から始まる英文を引き出します。また、問いのリズム感と誰を当てるかが大事です。置いていく人を作らないように意識しつつも、リズムで引っ張っていきます。毎時間毎時間繰り返すと早ければ3〜4時間目程度でかなり言えるようになるでしょう。もし、教科書を開いて文字に頼ってしまうと、同じ効果は出ないでしょう。

最終的には文字を書いたり読んだりする練習も必要ですが、音声での練習を中途半端にすると英文を体に取り込むことができず、英文の解説に終始することになります。感覚的にできるようになるにはある程度の時間が必要です。気長にやれるかどうかだもっとも大事ですね。音から入ることの効能は思っているより大きいです。