英語授業の独り言

英語の力を分解する

英語を習得するといっても人によってそのレベルは違います。目的とする場面も異なることでしょう。ある人は旅行に行った時に困らないくらいのレベル。またある人はビジネスで商談ができるレベル。人それぞれです。

ここでは、中学校3年生までの学習内容で簡単な意思疎通をすることができるレベルを指すことにします。

そのゴールまでの行程を考えるわけですが、そもそも英語の力とはなんでしょうか。それがわからない状態でロードマップを描くことはできません。簡単に言えば、「何ができるようになればいいのか」を分解して考えて置くことです。

わたしは、英語を習得するために高めるべき力は5つだと考えています。

①語彙力
中学校卒業までに学習する語彙量はおよそ2,300語です。

②英文生成力
簡単にまとめると語順と文法です。

③瞬発力
瞬時に英文を生成する力です。

④英文運用力
文脈で英文をどう使うかです。国語力に近いかもしれません。

⑤発音
リスニングの力のベースでもあります。

です。それぞれについてもう少し具体的に考えましょう。

《①語彙力》
犬と言いたいのにdogを知らなければコミュニケーションは図れません。中学校3年生くらいになると難しい単語も出てきます。例えばdestroy(破壊する)という単語は旅行や日常会話ではさほど使うことはないでしょう。break(壊す)という単語で置き換えることも可能です。このように難しい単語は簡単な単語で言い換えることもできますが、dogを別の単語を使って言い換えようと思うと余計に難しくなってしまいます。基礎となる単語は不可欠です。

《②英文生成力》
テストで点は取れるのに思うようにコミュニケーションが図れない人は、意外とこの力が足りていません。小学校でパターン練習によるフレーズのインプット、そのフレーズを使ったインタビュー活動を行っても英文生成力は鍛えられません。語順の感覚と基本の文法がどれだけ定着しているかです。2語文や3語文、それに時・所などを加えた英文の型を身につけて使いこなせるレベルに引き上げる必要があるのです。

《③瞬発力》
この力でつまる人がものすごく多いのではないでしょうか。英語が出てこないもどかしさで嫌になってしまったり、諦めてしまったりする人もいることでしょう。知っていることとできることは違います。言いたいことを即座に発する瞬発力はトレーニングによって鍛えられます。学習目標となっている基本文しか使わないインタビュー活動などの、いわゆる言語活動をしていてもこの力は鍛えられないのです。

《④英文運用力》
ある程度言いたいことを英文にする力が育ったとしても必要な場面で英文が出てこなければ無価値ですよね。簡単に言えば「ありがとう。」は英語で”Thank you.”だとわかっていても、”Thank you.”と言う場面で”Thank you.”が出てこなければ使えていることにはならないということです。もちろん、Thank you.程度の英文なら困らないでしょうけど…。

《⑤発音》
ザ・ジャパニーズイングリッシュでもある程度は通じるのでそれでも構わないのですが、レベルアップの障害になっているのが発音であることも多いのです。口にしたことはそのまま耳から入ってきます。リアルな英語の音と自分が発する英語の音が違っているということは、音の認識が異なっているということです。そのため聞き取れないという問題が発生します。言語は必ず音声が存在します。音の認識がズレは大きな問題を生んでしまいます。

この5つの力を核として、「聞く・読む・話す・書く」があります。話す力を伸ばしたいからといってなんでも話していればいいわけではないのです。5つの力のどこが足りないのかを見つけて伸ばしていかなければなりません。それぞれの力をバランスよく、どう伸ばしていくかが英語学習のロードマップになるだと考えています。